どうもどうも、タケヒロです。
今回は初心に戻って痛みについて復習します。
案外忘れちゃってる内容などもあると思いますのでどうか最後まで読んでもらえればと思います。
そもそも痛みとは?
2020年7月16日、国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain:IASP)は1979年来、41年ぶりに『痛みの定義』の改訂1)を行い、痛みの定義は次のような内容になりました。
「痛みは実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」
実際に組織に損傷がある、もしくは損傷が起こりそうな時に感じる不快感とそれに伴う辛さや苦しさなどの情動も含めたものということでしょう。
さしたる原因が見当たらなくとも上記のように訴えがあるのであれば痛みとして認識しようねってことです。
分類
- 表在痛
皮膚の侵害受容器への刺激で起こる痛み
高閾値受容器(Aδ線維)とポリモーダル受容器(C線維)の二つがあり、前者は鋭い痛みを、後者は鈍い痛みを伝える - 深部痛
皮下組織、骨格筋、腱、骨膜、関節に存在する受容器への刺激で起こる痛み
表在痛と比較すると鈍く、部位の局在性に乏しい - 内臓痛
内臓の知覚神経の自由終末への刺激で起こる痛み
主な侵害刺激は拡張、伸張、閉塞、充血、炎症など
ハッキリしない痛みで、内臓自体よりも腸間膜や腹膜などの知覚神経を刺激して痛みが起こることが多い
深部痛よりもさらに鈍く、局在性も乏しくなる
自律神経反射や関連痛を伴うこともある - 神経障害由来の痛み
痛覚伝導路のどこかで器質的または機能的な障害があると起こる痛み
侵害受容器を興奮させるような刺激がなくとも痛みが起こる
焼け付くような、締め付けるような痛みが続いたり、発作的に強烈な痛みが神経に沿って出現することもある
痺れや知覚鈍麻・過敏を伴うこともある - 心因性疼痛
器質的な損傷がないのにも関わらず、精神不安、躁うつ、ヒステリー、神経症などが原因で起こる痛み
下行抑制機構の障害と考えられていたりするが詳細は不明
原因
外部刺激
- 機械刺激
圧迫や圧力、強い伸張など - 温度刺激
低音(17°以下)もしくは高温(43°以上) - 電気刺激
強い電流 - 物理刺激
液体と組織の細胞内液との浸透圧の差異など - 化学刺激
刺激性物質
内部刺激
炎症箇所で生じるブラジキニンやプロスタグランジン、出血箇所で生じるヒスタミンやセロトニン、血流停滞で生じる乳酸などの内因性発痛物質による。
炎症
機序
組織の損傷または組織への強刺激により侵害受容器が興奮、そのインパルスが脳へ到達すると痛みとして認識されます。
損傷箇所で求心性インパルスが発生する一方で軸索反射*が起こり、サブスタンスP・CGRPが放出されます。
壊れた細胞からはKイオンやHイオンが出てきて侵害受容器を興奮させます。
出血箇所では血液凝固反応によりブラジキニンが作られ、血小板が活性化するとセロトニンが放出されます。
内因性発痛物質の作用で血管拡張と血管透過性の亢進が起こるため、局所は赤くなり、熱をもち、腫れてきます。
*皮膚などにある求心性神経の刺激により発生をしたインパルスは中枢へと向かうが,その一部は求心性神経の軸索側枝を通り,再び末梢へ向かい反応を惹起する. このように軸索側枝を介して起こる反応中枢のない反射
炎症が起こると血管拡張により損傷部の血流が上昇し、酸素や栄養が多く運ばれ、これにより細胞代謝にブーストがかかります。
血管透過性の亢進により白血球が血管外に滲出し、損傷部位の感染を防ぎ、ゴミを貪食します。
つまり炎症は修復を加速させるための反応ということですね。
侵害受容器
侵害受容器はほぼすべての器官に分布していますがその密度はまちまちです。
- 頭皮:150
- 額:175
- 眼瞼:160
- 鼻先:40
- 頚部:220
- 肩甲骨:210
- 肘頭:215
- 前腕内側:190
- 手背:170
- 殿部:165
- 膝窩:225
- 足底:45
※単位は個/㎠
皮膚に存在し、機械的な刺激にのみ反応する高閾値機械受容器、皮膚と全身に存在し様々な侵害刺激に反応するポリモーダル受容器の2つがあります。
神経線維
神経線維は太さと髄鞘の有無によってA・B・Cの3タイプに分類されます。
神経線維 | 直径(μ) | 伝導速度(m/秒) | 機能 |
Aα | 12-20 | 70-120 | 筋紡錘からの求心性情報 骨格筋支配 |
Aβ | 5-12 | 30-70 | 触圧覚 |
Aγ | 3-6 | 15-30 | 筋紡錘への遠心性情報 |
Aδ | 2-5 | 12-30 | 痛覚、温冷覚 |
B | 1-3 | 3-15 | 交感神経節前線維 |
C | 0.4-1.2 | 0.5-2.0 | 痛覚、温冷覚 |
C | 0.3-1.3 | 0.7-2.3 | 交感神経節後線維 |
Aδ線維は鋭い痛みを素早く伝えます(一次痛)。
C線維は鈍い痛みを伝えます(二次痛)。
ちなみに髪の毛の太さは80μ前後なので、比較するとAδ線維は髪の毛の1/20、C線維は1/100の太さになります。
ヘルニアなどではまず太い神経線維から順に障害を受けていくので上の表で見てみると神経症状の移り変わり(筋力低下→痺れ→知覚異常)があっても驚かないのではないでしょうか。
内因性発痛物質
損傷を受けると組織の細胞から内因性発痛物質が放出され、これらは侵害受容器を興奮させたり、感度を上げたりする作用をもちます。
- アミン類
ヒスタミン、セロトニン、アセチルコリン、ノルアドレナリン - ペプチド類
ブラジキニン、サブスタンスP、CGRP - 脂質
プロスタグランジン、ロイコトリエン - 電解質
Kイオン、Hイオン - その他
サイトカイン
ヒスタミン
結合組織では肥満細胞*に、血中では好塩基球・血小板に含まれています。
アレルギー反応を起こしたり、火傷や炎症で出現するブラジキニンや薬物刺激により放出されます。(脱顆粒)
- 血管拡張
- 血管透過性亢進
- 平滑筋収縮(気管支・消化管)
- 胃酸分泌亢進
- 発痛作用・かゆみ
*肥満細胞は組織中に存在し、好塩基球から文化したもの。刺激を受けると炎症を誘起する物質を放出する。
セロトニン
90%は小腸のエンテロクロマフィン細胞に存在し、これが血中に入ると血小板に蓄えられます。
- 血管収縮
- 血管透過性亢進
- 気管支平滑筋の収縮
- 腸管の運動促進
- 発痛作用・発痛増強作用
小腸以外では中枢神経に存在し、神経伝達物質として機能しています。
下行性疼痛抑制系、睡眠、体温調節、嘔吐、性行動、精神機能などの作用があります。
アセチルコリン
副交感神経節後ニューロンや運動神経末端から放出される神経伝達物質のひとつです。
発痛作用は強くありませんがヒスタミンにより増強されます。
ノルアドレナリン
交感神経節後ニューロンから放出される神経伝達物質のひとつです、
損傷部位で受容器を感作させて痛覚過敏を起こします。
ブラジキニン
血漿中の前駆物質キニノゲンから酵素のカリクレインの作用で合成されます。
- 血管拡張
- 血管透過性亢進
- 平滑筋収縮(気管支・消化管)
- 発痛作用・発痛増強作用・かゆみ
サブスタンスP、CGPR(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)
脊髄後根神経節にある一次侵害受容ニューロンの細胞体で産生されます。
侵害受容器が興奮し、一次侵害受容ニューロンまでインパルスが到達すると、後角で神経伝達物質として放出されます。
- 強い血管拡張
- 血管透過性亢進
- 肥満細胞の脱顆粒化
Kイオン
侵害刺激により損傷した細胞から遊離して侵害受容器を興奮させます。
Hイオン
侵害刺激により損傷した細胞から遊離して侵害受容器のイオンチャネルに作用し、興奮させます。
以上、痛みの基礎復習でした。
ではまたっ。
参考および引用書籍・サイト
集-tsudoi-のブログでは以下のリストを参考もしくは引用しています。
書籍
- ガイトン生理学 原著第13版
- 筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版
- グレイ解剖学 原著第4版
- プロメテウス解剖学 コア アトラス 第4版
- カラー図解 人体の正常構造と機能
- カンデル神経科学
- カパンジー機能解剖学
- 頭蓋仙骨治療
- アナトミー・トレイン
- チャップマンとグッドハートによる神経リンパ反射療法
- オステオパシーの内臓マニピュレーション
- The Mulligan Concept of Manual Therapy: Textbook of Techniques
- 臨床家のための基礎からわかる病態生理学
- マッケンジーエクササイズ頚椎・胸椎―構造的診断と治療法
- 腰椎―マッケンジーエクササイズ
- 「ポリヴェーガル理論」を読む
- からだのためのポリヴェーガル理論: 迷走神経から不安・うつ・トラウマ・自閉症を癒すセルフ・エクササイズ