今回は先日のMTGで話題に上がった腱障害についての内容になります。
マッケンジーの観点からの内容になりますのでそれだけご了承ください。
まず腱症という言葉ですが、アキレス腱炎や足底腱膜炎、上腕骨外側上顆炎などの腱障害のことを海外ではTendinopathy(テンディノパシー)と言いこれを直訳すると腱症となります。
腱症はDysfunction
腱症Tendinopathyはマッケンジー法4分類のうちのDysfunctionに該当します。
ここでDysfunctionがわからない人はこのブログを必ず読んで理解してください。
この理解をなしに読み進めるのは時間の無駄です。
で、このブログの中では説明していませんが四肢の場合はDysfunctionは実は2種類あります。
それが
- Articular Dysfunction
関節運動最終域のみで疼痛が誘発され、常に可動域制限があります。
改善はするが長期を要する。
→脊柱のDysfunctionと同じ - Contractile Dysfunction
痛みは間欠的ではありますが最終域のみでの誘発とは限りません。
問題の腱部分に負荷が加わると必ず誘発されます。
いわゆる腱症はこのContractile Dysfunctionに該当します。
Contractile Dysfunctionについて
病態
コラーゲン線維配列の破綻、細胞死、実質部分の筋線維芽細胞の増殖といった所見が見られます。
これらは細胞修復の失敗の結果見られる状態であり、編成した腱には本来あるはずのない血管や神経が豊富に認められrます。
病因
今のところ十分な解明はされていないそうです。
Contractile Dysfunctionの評価
以下の条件を満たす場合にはContractile Dysfunctionと判断できます。
問診
- 痛みの出る動作を継続すると?
→特に変化なし。悪化も改善もしない。 - 発症からの期間は?
→慢性 - 症状の持続性は?
→間欠的症状 - 症状の悪化因子は?
→問題となっている筋の収縮を伴う動作 - 安静時痛は?
→なし
運動検査
自動運動は疼痛誘発され、他動運動は疼痛誘発されません。
抵抗運動では疼痛誘発されます。
腱に負荷が加わると疼痛誘発されるので最終域だろうと可動域途中だろうと関係なく疼痛誘発されます。
腱への負荷が取り除かれると痛みが引くため間欠的となります。
除外診断
マッケンジー法4分類のうちDerangementとArticular DysfunctionとPostureを除外する必要あり。
ド・ケルバン病、上腕骨外側上顆炎、上腕骨内側上顆炎、腱板損傷、膝蓋腱炎、腸脛靭帯炎、足底腱膜炎と思ってもこれらの条件に当てはまればContractile Dysfunctionとして対処したほうが得策です。
これらが難治性と言われるのは世の中の大半の治療家はContractile Dysfunction(腱症)を知らないからではないかと思えて仕方ありません。
ぼく個人の意見では別にこれっぽちも難治性じゃないんでね。
Contractile Dysfunctionの治療
計画的なエクササイズで問題組織のリモデリングを図ります。
エクササイズは必ず痛みが誘発される負荷で行います。
ただし、エクササイズ終了後はただちに疼痛は消失しなければなりません。
疼痛誘発が起きなくなったタイミングで負荷を上げ再び疼痛誘発レベルの負荷でエクササイズを実施します。
患者の生活レベルに合わせてエクササイズのゴールレベルを設定します
行うエクササイズは必ず遠心性収縮エクササイズです。
腱に負荷を加えることで得られる効果にMechanotransduction(細胞が圧力などの刺激を需要伝達するメカニズム)というものがあり次の手順で効果が得られるとされています。
- Mechanical coupling
負荷による細胞刺激 - Biochemical coupling
チャネルによる細胞質同士の結合 - Transmission of biochemical signal
細胞内間をカルシウムとタンパク質が流動 - Tendon cell response
細胞核がコラーゲン産出を増加
アキレス腱炎を例にしたContractile Dysfunction(腱症)
例えば担当して色々やってはいるが良くならないアキレス腱炎の患者さんがいたとします。
リリースだったり、物療だったり、インソールだったり色々やったと。だが良くならないと。
問診はどうだったでしょう?
運動検査は?
対象の筋に収縮が入らない限りは痛くないはずです。
他動で足関節を思い切り底背屈しても痛くないのであれば怪しいですよね。
ではContractile Dysfunctionと判断できた場合のエクササイズプログラムは?
下腿三頭筋の遠心性収縮エクササイズですね。
まずは非荷重下で自動抵抗運動から始めて必ず疼痛誘発する負荷レベルのエクササイズですね。
そのうち疼痛誘発しなくなるのでそこが負荷UPのタイミングです。
次は荷重下で行いましょう。
荷重下にも程度というものがありますから軽い負荷から始めていきましょう。
ここの考え方はアイデアです。
自分で考えてください。答えを求めるのはやめましょう。
こうして患者さんの求める生活レベルに適したエクササイズまで負荷を上げていき、何回やっても疼痛誘発が起こらなければ晴れて卒業となります。
ということで聞き慣れない腱症についての解説でした。
この内容を知っていると知らないでは臨床は大きく変わってくるのではないかと思います。
ではまたっ。
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